洋楽チャート調べ byアジアンらいおん

Billbord200中心に洋楽チャート分析します。(ロック多め)

【洋楽チャート分析】The Rolling Stones ”Let It Bleed”

The BeatlesのSgt. Peppersを取り上げた次はいわゆるイギリス4大バンドの一角であるThe Rolling Stonesの「Let It Bleed」を分析します。

 

本題に入る前に、The  Rolling Stonesにおいて唯一無二のドラマーであるチャーリーワッツが記事を書いている2021年に亡くなりました。あの抜けの良い軽やかなグルーヴのドラムはThe Rolling Stonesに欠かせないサウンドで大好きなドラマーでした。R.I.P

 

さて先ずアルバムの内容からですが、なんと言っても不穏な空気で始まる1曲目の「Gimme Shelter」が物凄くかっこいいです。サビのコーラスもゾクゾクしますね。60年代のどの曲を見ても似た雰囲気の曲はありませんし、70年代への転換期を感じさせます。

 

と思ったら「Love In Vain」のようなRobert Johnsonのデルタブルースであったり、3曲目の「Country Honk」はスワンプ感満載で、アルバム全体の雰囲気としてはむしろ前作の「Beggars Banquet」のようなルーツ回帰の印象が強いです。

特にライブで目立つのは「Midnight Rambler」で、当時の多くのライブでハイライトになっていたようです。Rolling Stonesにとって珍しく曲の長さ7分弱!もあります。最後の「You Can't Always Get What You Want」の雰囲気も冒頭の「Gimme Shelter」と相反するようでとても解放感があり素晴らしいです。


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文章にして書くと改めて素晴らしいアルバムだなあ。このアルバムが1番良いと評するファンも多いですよね。

 

実は1位を取った事がないアルバム

これほどの名盤で世界的な知名度を誇るこのアルバムですが、実はBillboard200で1位を一度も取ったことがありません。リリースは1969/12/5です。

 

初登場の1969/12/6週は発売されてすぐのチャートなので199位ですが、翌週には29位までランクアップしています。週を追うごとに順位を上げていき、4週目の1969/12/27週には3位となっています。この3位がこのアルバムの最高順位です。

この1969/12/27週、1位はなんと「Led Zeppelin」で2位はThe Beatlesの「Abbey Road」です。どちらもこれまた超が何個ついても足りないほどの名盤であるため3位で終わってしまうのはしょうがないのかもしれないですね。

発売の半年後1970/6/6週はまだチャートしていますが78位になっています。この頃はThe Rolling Stonesのようなバンドとまた少し毛色が違うような「ヒッピー文化」全盛期らしくWoodstockのサウンドトラックが4位、映画Easy Riderのサウンドトラックが18位(40週チャートイン)です。そこにJackson5の「ABC」が22位で登場していたり、アメリカ国内ではロック以外に当然MotownやAtlantic、Atlanticから独立したStaxなどのブラックミュージックが非常に勢いのある時代でした。

ポップミュージックの多様性

前回記事のSgt. Pepper‘sと共にLet It Bleedのチャートを調べていて気づいたのが、Iron Butterflyの「In-A-Gadda-Da-Vida」がずっとチャート入りしていることです。Let It Bleedリリース半年後の1970/6/6週には67位になっており、これは99週目のチャートインです。Let It Bleedが78位であることを考えると驚異の粘りですね・・・。「In-A-Gadda〜」はサイケデリックロックの名盤でハードな作品です。重厚な雰囲気のある作品でタイトル曲はラッパーのNasが「Hip Hop is Dead」でサンプリングしていることから、HipHopが好きなら耳馴染みある人も多いと思います。ですが・・・

今はそんなに聴かれていないよな?笑


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2021年現在の知名度イメージとまた違う気がしてしまいます。そこが面白いんだけど。すくなくとも一般的にはRolling Stonesの方が圧倒的に知られているバンドですよね。

他に、The Bandのアメリカのカラッとしたサウンドとコーラスが印象的な「The Band」やジャズからロックへのアプローチが他にない重厚なグルーヴを生み出しているMiles Davisの「Bitches Brew」、70年以降一気に花開くスワンプロックの道標的な作品であるLeon Russellの「Leon Russell」などポップミュージックの主役になっていたロックは様々な音楽的要素を吸収して大きくなり、さらに多様性を増して広がっていった時代と言えます。

 

「Let It Bleed」は最終的に44週チャートインします。The Rolling Stonesで言うと、この後の「Stickey Fingers」が69週、「Exile On Main Street」が57週とセールス的に大きくなるのは少し先のようです。ライブ会場も大きくなっていき、80年代からはスタジアムバンドになります。

 

以上、ポップミュージック転換期にドロップされたThe Rolling Stonesの「Let It Bleed」でした。当時のチャートを見てみると凄いスピードで様々な音楽を飲み込んでいくロックの様子が面白いですね。

 

 

【洋楽チャート分析】 The Beatles “Sgt. Pepper‘s Lonely Hearts Club Band“

最初に取り上げるのは言わずもがな名盤であるThe Beatlesの「Sgt. Pepper‘s Lonely Hearts Club Band」です。現代まで様々なメディアで格付けされてきたロックの名盤ランキングなるものでは必ず上位に入っているイメージがありますね。

ロック初のコンセプトアルバムで架空のバンドがライブを行う設定になっています。ジャケットも一度見たら脳裏に焼き付くほど超強烈・・・!

このアルバムは後の音楽に対する影響もさることながらジャンルの多様性が素晴らしい形で調合されていて、鋭いサウンドや民族系の音楽から牧歌的な雰囲気、壮大な終わりなど聴き終えた後は言葉にできない満足感がありますよね。個人的に凄く好きな曲は4曲目の「Getting Better」です。ジョンもポールも才能が爆発し過ぎて良い意味の飽和状態を感じます。


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リリース

イギリス 1967/6/1

アメリカ 1967/6/2

因みに日本は1967/7/5です。

※このブログの決まり事として、その週の最終日である土曜日をとってoo年oo月oo週とします。例えば1967/6/24週は6月18日から6月24日までの1週間を差しています。

初登場

Billboardの初登場は1967/6/24週で8位です。すでにアメリカでも超人気バンドであったThe Beatlesですが、やはり当時の情報スピードもあったでしょうから67年時点ではリリースいきなり1位というわけではなかったようですね。

この週の1位はThe Monkeesの3rdアルバム“Headquarters“でチャートイン3週目でした。

The Monkeesはこの週で・・・

7位 「More of The Monkees

16位 「The Monkees

とヒットしまくっています。The Monkeesに至っては発売したのが66年の10月なので8ヶ月も経っています。いやー凄いな笑

The Monkees自体は作られたバンドというイメージもありますが、このアルバムは自分達で作曲しているものも多く、その音楽性はロックンロールやカントリーとポップスのブレンド加減が素晴らしいです。変な表現かもしれませんがとても丁度良い印象があります。あんまり今回は語らずに、またいつか別の回で詳しく触れていこうと思います。

The Beatlesは他に123位にRevolver」が43週目のチャートイン。それ以外で印象的だったのはAretha Franklinの「I Never Loved a Man the Way I Love You」が12週目Jefferson Airplaneの「Surrealistic Pillow」が14週目など。

ロングラン

当時のチャートで上に挙げたように14週はロングヒットのようで、やはり少し目立っていました。もちろんThe Monkeesも目立っていますがそれ以上にDoctor ZhivagoやSound of Musicなどのサウンドトラックがぶっちぎりで長い間チャートインしている傾向があります。Sgt. Pepper'sが登場した時点でSound of Musicのチャートインは119週目で、年換算すると2年以上。

もちろん現在とは集計方法も異なりますし、例えば2021年10月某日現在のBillboard200を見るとBob Marleyの「Legend」は89位、チャートインは697週なのでロングランの感覚が現代とまた違う気がします。

当時はまだロック黎明期と言えるような時代で過去の名盤を掘るようないわゆる「ディグる」ことは極めて少なかったと言えます。情報網も十分に発達しているはずもなかった状況で、“Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band“はなんと1967/10/7週まで連続16週1位をキープします。

これ、特に凄いのはただチャートインし続けたのではなく1位をキープし続けたことです。チャート順位と音楽性は必ず比例するとは思えませんが、いかに多様で次々と人々を惹きつけ続けたのか、Billboard200を見るだけで少しばかり当時の空気に触れたような気がします。

この最後に1位だった1967/10/7週は、実はJimi Hendrix Experienceの「Are You Experienced?」が10位(7週目)だったりします。

さて、長い間トップに君臨していたSgt.の代わりに1967/10/14週に1位になったアルバムは・・・

Bobbie Gentryの“Ode To Billie Joe“でした!・・・正直意外。

Sgt. Pepper'sと比べても知名度は低いですよね。ですが音楽性はカントリーやフォークをベースに、何よりハスキーヴォイスで心を一気に掴まされます。リードトラックであろう「Ode To Billie Joe」の歌詞は、Billy Joeが橋から飛び降りたというニュースが教会に行ったり日常のアップルパイを準備する日常の1シーンのように出てくるのですが、後半になっていくにつれなんとも虚しくなっていきます。彼女は社会的な問題やジェンダーなどを歌うことも多く、格差や差別、戦争問題に対して意識的であった当時のアメリからしら1位になるのも納得です。


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リリースから1年後の1968/6/29週はまだ33位に残っていました。

これが浮き沈み激しいなら流行り廃りという言葉で片付けられますがジリジリと下がっていったという事は単純に持ってる人、つまり買う必要がない人が増えていったのでしょう、実験的なアルバムなのに高いレベルでの普遍性があったという事ですよね・・・。1位はSimon&Garfunkel「Bookends」でチャートイン10週目です。

Simon&Garfunkelで言えば2021年10月某日現在、Spotify再生回数が一番多いのが「The Sound of Silence」で2番目に多いのがこのアルバムに入っている「Mrs. Robinson」でした。前者が約3億6千9百万回なのに対し、後者は約3億6千8百万回。数字が大きすぎてわけわかんなくなりますね。

 

実はこの週はJimi Hendrixの「Are You Experienced?」が45週目で8位だったりCreamの「Disraeli Gears(カラフルクリーム)」が30週目で4位だったりと明らかにチャートのロック色が濃くなっており、とりわけサイケデリックムーブメントが顕著に表れています。 そしてThe Beatlesの中でも特にサイケ色の濃い「Magical Mystery Tour」はこの週32位(28週目)でした。

そして1年半後の1969/1/4週はチャート60位(この時1位はホワイトアルバム)2年後の1969/6/26週にはチャートインしていませんでした。

 

以上、The Beatlesどころかポピュラー音楽の大名盤「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のBillboard200チャートでした。世界的なバンドである一方チャートインしているアメリカ音楽の「らしさ」も感じられました。本当はもうちょっと他ジャンルと音楽的に絡ませたかったのでまたこのアルバムを取り上げるかも。

 

 

アメリカの音楽誌チャート【Billboard】

プロローグ

このブログを書いている2021年10月現在は新型コロナウイルスの感染拡大が世界中で進み、収束の目処が立たない状況です。もはやコロナウイルスとの向き合い方は人類の課題となっている中で、「音楽」とりわけ「ライブ」の楽しみ方はコロナ以前とすっかり変わってしまいました。ライブに携わる方々はどのような感染対策を講じれば継続できるのかを日々模索なさっている事でしょうし、自分も一刻でも早く安心してライブが楽しめるようになって欲しいと願うばかりです。

一方でいわゆる「音源」の楽しみ方はYoutubeやストリーミングが中心で、この流れは新型コロナのパンデミックとは別の文脈にあるように思えます。

CDやレコードにも言える事ですが、「音源」の受け取られ方は社会情勢よりもテクノロジーとの関係が強固で、ある意味時代に左右されにくい一面があると言えます。もちろん実際は社会情勢との関係も根深いと思いますが、分かりやすく表面化されているとは言えない気もします。ただしチャートインしている音楽は真逆で、どの音楽も(サウンドにしてもリリックにしても)社会情勢を色濃く反映していると言えます。

そこでアメリカの1番有名なビルボードチャートを見れば各時代のタイムトラベルとなって楽しいはずなので本ブログを始めるに至りました。ただし自分も調べながら書くのでそもそもチャートに関して詳しくありません。できればこのブログを基にちょっとしたコミュニティができて一緒に考察していければ嬉しいです。そして何より自分より詳しい方はいらっしゃると思いますので、コメントで色々ご指摘や御指南お待ちしております笑

そもそもBillboardとは

アメリカの音楽誌でポピュラー音楽のヒットチャートを掲載しています。「Radio & Records」と2大チャートと言われているようですが正直Billboardの方が知名度ありますよね。天と地の差がある気がするけど。。。

1894/11/1に【Billboard Advertising】という誌名で初創刊されています。当時は企業広告の雑誌で全8ページ、1部10セントでした。10セントと言ってももちろん今と当時とでは価値が異なり、物価を考慮すると

1部=約760円

あれ、あんまり現代の感覚と変わらないですね。これを賃金も考慮すると明治初期は1ドル=20000円と言われていたので

1部=約4000円

高いですね笑 実際はどんな感覚だったのでしょうね。

1896年にはカーニバルやサーカスの広告を掲載しはじめ、翌年には【Billboard】に誌名を改名、その後鉄道網の拡大と共に広がっていきます。当時からエンターテイメントに関する嗅覚は鋭いようで、1914年にはポピュラーソングチャートを掲載します(毎号ではなく、1回きりの企画ものだったようです)。1916年からはレコードの認知も広がったので度々リズム&ブルースやカントリーのチャートも掲載していました。

2つのBillboardメインチャート

Billboardには様々な種類のチャートがありますが、特に現代でも主要とされているのが【HOT100】と【200】です。

【HOT 100】

シングルチャートです。セールス+エアプレイ(オンエア)で集計しています。※現在はストリーミングの発達もあり集計方法は異なります。現在の音楽を取り上げる際に改めて説明します。1958/8/4から掲載をスタートさせています。

最初のNo.1はRick Nelsonの「Poor Little Fool」です。

彼は写真を見るとなかなかの色男で俳優でもあったようです。この曲もロカビリー要素に加えてドゥーワップの感覚もあって非常に良い曲です。

【200】

アルバムとEPのランキングです。セールスのみを集計します。また、アメリカの小売店で発売されていないアルバム(それと米国流通していない輸入盤)はチャートに載らないようです。実際は60年初めからステレオとモノラルそれぞれのチャートがありましたが、1963/8/17に統合されて【Top LP's】というチャートになりました。当時は150位までの掲載でしたが67年には200位までのチャートになり現在の【200】となりました(名前の変更は度々あり、正式に【200】になったのは1992年からです)。※本ブログでは63年の【Top LP's】から【200】として扱います。

最初のNo.1はAndy Williamsの「Days of Wine and Roses」邦題「酒と薔薇の日々」です。

Moon Riverでお馴染みで同曲は好きなのですが実際のところ自分はあんまり詳しくありません。。。おススメ曲コメントでお待ちしています!笑

因みに同じ週のHOT100のNo.1はLittele Stevie Wonderで「Finger Tips」です。いやー神童ですね。

LPの価格

チャート、特に【200】はセールスを反映しているので経済状況など考えると完璧に当時の人気や情勢を反映しているとはイマイチ言いにくく、とはいえそこまで考慮してたらブログなんて書いてられないという葛藤もあり。。。

そこで当時のLPの価格を見てみると大体$2〜4位でした。因みに映画のチケットは平均69セントでした。

映画チケットの約3倍は下らないと考えるとやっぱりLPは高価だったようです。ミュージシャンのインタビューとか見ても昔はLPが高くて買えなかったって話はよく見るし。けど色々とチャートを見てみるとその当時の流行りや空気感は反映されているように感じます。

※LPは「Long Play」の略で、要するにアルバムです。

 

さて幾つかBillboardのことを紹介したところで本ブログについて

 なぜ【200】を扱うのか

洋楽を考えた時に頭に浮かぶイメージはジャケットが多いと思います。例えばThe ClashのLondon Calling、Jimi HendrixのAre you Experienced?、大瀧詠一のA Long Vacationなど(邦楽でごめんなさい)良い音楽には良いアートワークありで、それはアルバムであり、よりアーティスティックであります。シングルはキリがないってのも少しあります。それと洋楽のコンテンツを手に入れる時、現代のストリーミング形態では違うかもしれませんが自分が貪っていた頃はシングルを買う機会はほぼなく、圧倒的にアルバムの方が馴染み深いからです。

なぜBillboardなのか

60年代イギリスのミュージシャンが稼ぐためにアメリカに渡ったように、マーケットの規模や多様なジャンルの中心はやはりアメリカだと思ったからです。音楽チャートというものは結局のところお金儲けの結果でもありますので、アメリカで最も権威のあるであろうBillboardを取り扱うことが1番分かりやすく面白いと考えたからです。

ただし比較などで全英チャートや日本のチャートを取り扱う可能性もあります。気力があれば・・・。

 

兎にも角にも、今後このコミュニティ上で皆さんと楽しく、居酒屋で音楽の話をするようにやっていきたいなあ思うところです。