洋楽チャート調べ byアジアンらいおん

Billbord200中心に洋楽チャート分析します。(ロック多め)

【洋楽チャート分析】 The Beatles “Sgt. Pepper‘s Lonely Hearts Club Band“

最初に取り上げるのは言わずもがな名盤であるThe Beatlesの「Sgt. Pepper‘s Lonely Hearts Club Band」です。現代まで様々なメディアで格付けされてきたロックの名盤ランキングなるものでは必ず上位に入っているイメージがありますね。

ロック初のコンセプトアルバムで架空のバンドがライブを行う設定になっています。ジャケットも一度見たら脳裏に焼き付くほど超強烈・・・!

このアルバムは後の音楽に対する影響もさることながらジャンルの多様性が素晴らしい形で調合されていて、鋭いサウンドや民族系の音楽から牧歌的な雰囲気、壮大な終わりなど聴き終えた後は言葉にできない満足感がありますよね。個人的に凄く好きな曲は4曲目の「Getting Better」です。ジョンもポールも才能が爆発し過ぎて良い意味の飽和状態を感じます。


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リリース

イギリス 1967/6/1

アメリカ 1967/6/2

因みに日本は1967/7/5です。

※このブログの決まり事として、その週の最終日である土曜日をとってoo年oo月oo週とします。例えば1967/6/24週は6月18日から6月24日までの1週間を差しています。

初登場

Billboardの初登場は1967/6/24週で8位です。すでにアメリカでも超人気バンドであったThe Beatlesですが、やはり当時の情報スピードもあったでしょうから67年時点ではリリースいきなり1位というわけではなかったようですね。

この週の1位はThe Monkeesの3rdアルバム“Headquarters“でチャートイン3週目でした。

The Monkeesはこの週で・・・

7位 「More of The Monkees

16位 「The Monkees

とヒットしまくっています。The Monkeesに至っては発売したのが66年の10月なので8ヶ月も経っています。いやー凄いな笑

The Monkees自体は作られたバンドというイメージもありますが、このアルバムは自分達で作曲しているものも多く、その音楽性はロックンロールやカントリーとポップスのブレンド加減が素晴らしいです。変な表現かもしれませんがとても丁度良い印象があります。あんまり今回は語らずに、またいつか別の回で詳しく触れていこうと思います。

The Beatlesは他に123位にRevolver」が43週目のチャートイン。それ以外で印象的だったのはAretha Franklinの「I Never Loved a Man the Way I Love You」が12週目Jefferson Airplaneの「Surrealistic Pillow」が14週目など。

ロングラン

当時のチャートで上に挙げたように14週はロングヒットのようで、やはり少し目立っていました。もちろんThe Monkeesも目立っていますがそれ以上にDoctor ZhivagoやSound of Musicなどのサウンドトラックがぶっちぎりで長い間チャートインしている傾向があります。Sgt. Pepper'sが登場した時点でSound of Musicのチャートインは119週目で、年換算すると2年以上。

もちろん現在とは集計方法も異なりますし、例えば2021年10月某日現在のBillboard200を見るとBob Marleyの「Legend」は89位、チャートインは697週なのでロングランの感覚が現代とまた違う気がします。

当時はまだロック黎明期と言えるような時代で過去の名盤を掘るようないわゆる「ディグる」ことは極めて少なかったと言えます。情報網も十分に発達しているはずもなかった状況で、“Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band“はなんと1967/10/7週まで連続16週1位をキープします。

これ、特に凄いのはただチャートインし続けたのではなく1位をキープし続けたことです。チャート順位と音楽性は必ず比例するとは思えませんが、いかに多様で次々と人々を惹きつけ続けたのか、Billboard200を見るだけで少しばかり当時の空気に触れたような気がします。

この最後に1位だった1967/10/7週は、実はJimi Hendrix Experienceの「Are You Experienced?」が10位(7週目)だったりします。

さて、長い間トップに君臨していたSgt.の代わりに1967/10/14週に1位になったアルバムは・・・

Bobbie Gentryの“Ode To Billie Joe“でした!・・・正直意外。

Sgt. Pepper'sと比べても知名度は低いですよね。ですが音楽性はカントリーやフォークをベースに、何よりハスキーヴォイスで心を一気に掴まされます。リードトラックであろう「Ode To Billie Joe」の歌詞は、Billy Joeが橋から飛び降りたというニュースが教会に行ったり日常のアップルパイを準備する日常の1シーンのように出てくるのですが、後半になっていくにつれなんとも虚しくなっていきます。彼女は社会的な問題やジェンダーなどを歌うことも多く、格差や差別、戦争問題に対して意識的であった当時のアメリからしら1位になるのも納得です。


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リリースから1年後の1968/6/29週はまだ33位に残っていました。

これが浮き沈み激しいなら流行り廃りという言葉で片付けられますがジリジリと下がっていったという事は単純に持ってる人、つまり買う必要がない人が増えていったのでしょう、実験的なアルバムなのに高いレベルでの普遍性があったという事ですよね・・・。1位はSimon&Garfunkel「Bookends」でチャートイン10週目です。

Simon&Garfunkelで言えば2021年10月某日現在、Spotify再生回数が一番多いのが「The Sound of Silence」で2番目に多いのがこのアルバムに入っている「Mrs. Robinson」でした。前者が約3億6千9百万回なのに対し、後者は約3億6千8百万回。数字が大きすぎてわけわかんなくなりますね。

 

実はこの週はJimi Hendrixの「Are You Experienced?」が45週目で8位だったりCreamの「Disraeli Gears(カラフルクリーム)」が30週目で4位だったりと明らかにチャートのロック色が濃くなっており、とりわけサイケデリックムーブメントが顕著に表れています。 そしてThe Beatlesの中でも特にサイケ色の濃い「Magical Mystery Tour」はこの週32位(28週目)でした。

そして1年半後の1969/1/4週はチャート60位(この時1位はホワイトアルバム)2年後の1969/6/26週にはチャートインしていませんでした。

 

以上、The Beatlesどころかポピュラー音楽の大名盤「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のBillboard200チャートでした。世界的なバンドである一方チャートインしているアメリカ音楽の「らしさ」も感じられました。本当はもうちょっと他ジャンルと音楽的に絡ませたかったのでまたこのアルバムを取り上げるかも。